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SS作品集
第9章  トラウマ


 あの時は本当に痛かった。凄く鼻血が出て、暫くは鼻にガーゼを当てていた。
 一瞬僕を見た部長が、山野の方へ身を乗り出す。
「ぜひ頂きたい。うちの息子達は、野球が大好きなんですよ」
 それを聞いた山野が、鞄から数枚のチケットを出して部長に渡す。
「ありがとうございます。息子達も本当に喜びますよ」
 部長に息子がふたりいるのは知っているが、もうとっくに成人している。でもまあ、野球が好きな人が行けばいいだろう。
「じゃあ君は若いから、サーフィンなんてどうかな。私は10代からやっていて、今も時々行くんだよ。たまには一緒にどうだい?」
 今度は、30代後半だと言っていた秋川(あきかわ)が話しかけてきた。
「サーフィンも大嫌いです。小学校3年生の時に海で溺れて以来トラウマになって、海を見るのも嫌です」
 あの時は本当に苦しいのに暫く誰も気付いてくれなく、助かったのが奇跡に近い。だから本物の海だけでなく、テレビや写真で見るだけでも息苦しくなる。
 それからはまた女性を含めた部長達だけで話し出し、僕はそれを聞きながら飲み続けた。


「君、困るよ。嘘でも話を合わせてくれないと……」
 店を出て相手を見送った後、部長が言う。
「まあいいか。もう二度と君をこういった場に誘うことは無いから。じゃあ」
 そう言い残すと、部長は止めたタクシーに乗ってひとりで帰ってしまった。
 僕は家まで電車で帰るしかない。
 でもまた、トラウマが増えてしまった。
 これはいくつ目だったかな。53か4。いや、56だったかもしれない。
 今は少し酔っているが、家に帰ってトラウマ日記を読めばはっきりするだろう。
 そして今日のトラウマを書き込まなくては。


 了


 あなたは、いくつのトラウマを持っていますか……?


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