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SS作品集
第13章  メール


 でも母親は、こんなことをするほどヒマではない。
 昼間はパートに出ていて、夕方からは、まだ実家にいる弟と妹、父親の夕食を作る。
 家事が好きで、ヒマさえあればどこか掃除しているし、テレビドラマを見るのも好きで忙しい。
 つい、実家にいた頃の思い出に浸ってしまったが、我に返ってメールの続きを読む。
 次に書いてあったのは大学時代のこと。
 高校と大学なら、一緒だったヤツが数人いる。
 もしからしたら、飲み会の席などで酔い、昔話をしたのかもしれない。
 でも、ここまで詳しく覚えているだろうか?

 君は中堅所のIT会社、「アインス・ジャパン」に入社。
 繁栄が見込めるくらい、仕事は山ほどある。

 確かにそうだ。僕は今、その会社で働いている。
 メールの通り仕事はたくさんあり、残業も少なくない。
 たまに、自宅のパソコンを使って仕事をしたりもするくらいだ。
 メールはまだ続いている。

 君の入った会社は、入社5年目に前触れもなく突然倒産する。勿論、退職金も出ない。
その前にどうか転職してくれ。
 婚約間近だった彼女にもフラれ、貯金ももうすぐ底を着く。
 毎日転職先を探し続けているが、僕くらいの能力では、どこにいっても無理なんだ。
 一年前から、大恐慌と言われるくらいの不景気で、倒産が相次いでいる。

 何なんだこれは? 会社が突然倒産する?
 5年後と言えば、後2年だ。
 僕は今の会社が気に入っている。転職する気なんてない。
 誰なんだ? こんなイタズラをするのは。
 再度確認したが、メアドに覚えは無いし、名前も書いていない。
 最後にあったのは、僕の名前。
 着信日を見ると、3年後の日付になっていた。


 了


 メールの内容を信じて転職しますか?
 それはあなた次第です……。


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