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SS作品集
第14章 アイドル
確かにそうかもしれない。私も何度か卒業を考えたこともあるが、レッスンやライブで忙しい日々に流されていただけ……。
ここにいれば、いつまでもアイドルでいられる錯覚をしていた。
永遠に。
「これからは、私の分も頑張ってね。応援してるから……」
新しいメンバーに告げてから部屋を出て、私は涙を堪えた。
青春の全てを捧げて恋愛禁止を守り、いまだに男性と付き合ったことが無い。
大学進学も諦め、歌やダンスのレッスンだけをしていた私に、この先何が出来るのだろうか。お芝居など、経験も興味もない。
年月が経つというのは、なんて残酷な事だろう。誰もが、永遠にアイドルでい続けることは出来ない。
結成から20年。16歳で入った私は、来月36歳になる。
終わり
何事にも、タイミングというものが……。