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SS作品集
第14章  アイドル


 今までも自主製作版として10枚以上のCDを出してきたが、メジャー発売となると全く違う感動と驚き。
 聞いた途端、みんなレッスン室で大騒ぎ。勿論私も一緒に。泣いている子もいた。
 曲は1週間で覚えて、まずはレコーディング。その後の数週間で振り付けを覚えながら、ジャケット写真や歌詞カード用などの写真の撮影。その合間に衣装の仮縫いもあり、振り付けを覚えたらデビュー用の衣装でDVD撮影。再来週には、出来上がった衣装でのデビュー告知用ポスター撮影の予定も。そんな予定表が全員に渡された。
 スケジュールは厳しいが、つらい事には慣れている。衣装のイメージ写真を見て、そこだけはみんなで浮かれてしまう。
 私達は勿論、プロデューサーも張り切る準備はOK。
 明後日には私達の公式サイトでも、デビューが正式発表される。
 ライブ終わりに帰ろうとすると、私だけが別室に呼ばれた。そこにいたのはプロデューサーと、初めて会う男性達。
 その1人が私を見て口を開く。
 「悪いが、君は来週いっぱいで卒業してくれ。自分で決めたことにして。明日、公式サイトで発表するから」
 突然の事で、私は言葉が出なかった。
「来週末には、盛大に卒業ライブをやるから。それに……」
 別の男性が、パーテーションの奥から女のコを連れてくる。
「代わりに加入するコだ。まだ14歳だが、これからはグループの若返りも図って行こうと思ってる」
 女のコは、真剣な表情で頭を下げてきた。
「彼女には極秘裏に、もうデビュー準備を初めてもらっている。新しいプロダクションが決まるまで、君の面倒はきちんと見るから」
 アイドルグループブームが始まる以前に、結成されたこのグループ。
 私は初期メンバー。
 仲間と一緒に、つらい事も乗り越えてきた。
「君も解ってくれるよね? 僕も、もう少し早く言えばよかったんだけど……」
 本当に済まなそうに言うプロデューサーが、卒業ライブ用のレッスン表を渡してくる。それを、作り笑顔で受け取った。


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