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SS作品集
第15章 早く見つけて
今日は僕の引っ越し祝い。
別に何もめでたくはないが、大学の仲間内で呑む口実が欲しいだけだ。
今回集まったのは僕も含めて7人。
ワンルームだが、もっと増えても大丈夫な広さ。1人では広すぎるくらいだ。風呂もトイレも広く、ここを借りたことに僕は満足していた。
スマホで動画を撮ったりして、僕を含めたみんなで盛り上がる。
2時間ほど呑み、みんな酔って話も盛り上がっていた。
あの教授の授業はどうだとか、あのゼミに入れば良かったなど、話は尽きない。
「キャー!」
動画を撮影していた女の子が悲鳴を上げ、スマホを落とした。
みんな、「どうした?」「どうしたの?」と話しかける。
「ベッドの、下に……。女の、人……」
「何にもいないぞー」
「おまえ、酔いすぎじゃないのか?」
女の子はスマホを拾い、その男子に渡す。
ベッドの下を覗いて笑っていた男子が、スマホの画面を見た途端に凍り付いたようになる。
「写ってるぞ! ほら!」
みんなにスマホを回して見ると、部屋は静まり帰った。
僕も見たが、ベッドの狭い隙間から、青白い顔の女性がこっちを見ているのがハッキリと写っている。
ベッドの下には引き出しが付いていて、人間の体が入るほどの隙間は無い。
そのまま何となくお開きになり、みんなそそくさと帰って行く。
いつもはテーブルの片付けやグラスを洗ってくれる女の子達も、今日はそのまま、女の子同士腕を組みながら急いで部屋を出て行く。
僕が借りたのは、“事故物件”というやつ。だから家賃は、他の部屋の半額だ。
たまにドアの前に、白い着物を着た髪の長い女性が見えたりしていたが、ベッドの下にもいたのか。
僕には元々霊感など無いが、それでも見えてしまう。
初めて見た時は驚いたが、霊らしきものは襲ってきたりしてこず、そこから動かない。夜にうなされたりもしないから、何の問題ない。事故物件と知って安く借りたのだから、多少のことは我慢するつもりだった。
霊と同居というのも、慣れれば何でもなくなる。