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SS作品集
第18章 セールスマン
こんなに金持ちなら、商品をいくつか買ってくれるかもしれない。
この商品は、一部屋に一つずつあってもいいものだ。
そんな期待を胸に、橋を渡る。
ゆらゆらと泳ぐ錦鯉に気を取られていると、橋の中央の一部がすっぽりと向け落ちた。
そのまま小川へ落ち、今度は腰まで水に浸かってしまう。
さっきの泥は洗い流されたが、一度靴を脱いで中の水を出した。
《まだ進みますか? ご自由にどうぞ》
庭のどこかに、スピーカーがあるらしい。
「失礼します……」
そう言って、来た道を引き返した。
この先、何があるか分からない。
最近、こんないたずらが流行っている。
セールスマンをわざと優しく招き入れ、いたずらを仕掛ける。
それをカメラで録画し、編集した後にネットで公開すると、たくさんの称賛がもらえるようだ。そんな動画を、数多く観たことがある。
僕が売っているのは、小型の録画用カメラ。
元々は防犯用だが、現在ではそんな使われ方をしている。
自宅の敷地内なら、防犯のためだと罰則はない。
ちゃんとした人に会えれば、売る自信はあるのに。
皮肉なものだ。
おわり
こんな未来。来ると思いますか?
ネットを使う人の、モラルによってでしょう……。