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SS作品集
第22章 カード
僕は、高校の日本史の教師を目指して勉強中。
大学生を卒業し、教員免許を取得するためには、色々な知識を身に付けなければならない。
古代の文化を感じさせる、美しい街並み。公園には自然の木々が生い茂り、犬を散歩させている人もいる。
僕は、そんな500年前の日本を見て回っていた。
商店街と言われる場所も、活気があっていい。肉や魚などそれぞれが、別の店で専門的に売られているそうだ。
売り手が声を上げて、客にアピールしていた。それを聞いて足を止めた客に、試食と言って売り手が少しの食べ物を無料提供している。
きちんと予習はしてきたが、そんな様子に驚きを隠せない。
子供達も自由な服装で歩き、何か買って食べたりしていた。
僕の時代では考えられないことだ。
比較的平和だったこの時代について、学校の授業では簡単に流してしまう。
それでも教師志望として、この目で見ておきたかった。
地球誕生から僕の時代までの歴史は長く、全てきちんとやっていたら卒業まで間に合わない。
あまり大きなニュースがない時代は、出来事を紹介する程度。
それでも、電子テキストの内容量は他の教科の倍以上。逆に身近になった英語は、年々減っている。
この時代に来たのはツアーで、
最初は、ツアーガイドと共に色々な施設を見て回った。
その後の自由行動も、あと一時間。
僕も何か買ってみようと思った。
普段はネットショッピング。それは僕の世代なら当たり前のことだ。だから店で実際に品物を買ういいチャンス。
何事も経験しておかなければ、教師になって生徒に訊かれたら困る。
高校時代の僕の担当教師は、テキスト通りのことしか教えてくれなかった。こちらから質問をすると、困った表情をしてごまかされてしまっただけ。
僕はそんな教師にはなりたくない。
テキスト以外のことも知り、生徒に日本史に興味を持ってもらいたい。
そのためのタイムトラベルだ。