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不器用な夫
第2章 執事



首を傾げ、ゆっくりとハコが何かを考える。


「着替えくらいは白鳥無しで自分で出来るようになりますから…。」


ハコがそう言って寝室から出ようとする。


「茅野君!」


僕は慌ててハコを呼び止める。


「はい?」

「スカートを履き忘れてる。」

「あー…。」


床に落ちたスカートをハコが拾い上げてから照れたように僕に笑顔を見せる。


「忘れ物が多過ぎる。」


教師として僕は僕の嫁に注意する。

実際、ハコは忘れ物の帝王だとまで言われてる。

持ち物に関しては執事の白鳥さん任せだから、そんなに目立つほどではないが、テストなどの名前の書き忘れや学校からの連絡の手紙を学校に置き忘れる事はもはや日常茶飯事となっている。

この先はハコの生活を白鳥さん無しで僕が面倒を見る事になりそうだと僕はやはりため息を吐く。


「先生…。」


ハコが不満そうな表情を浮かべて僕を見る。


「なんだ?」

「ずっと眉間がシワシワだよ。」


泣きそうな顔へとハコの表情が変わる。


「そうか…?」


そんなつもりはなかったがハコを傷付けたとは思うからハコの頭を撫でてやる。


「なあ、茅野君…。学校では…。」

「わかってます。夫婦という態度は出さない。」


驚きが隠せない。

天然キャラのハコが意外とちゃんとした常識を備えてるのだと感心する。


「国松のお義父さまから聞いてますから…。」


今度は僕の驚きにハコが口を尖らせる。

コロコロとよく変わる表情だと笑いたくなる。


「そんなにおかしいですか?」

「いや、わかってくれてるのならそれでいい。」


だから家ではハコを嫁として扱ってやれという父の声が聞こえる気がする。


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