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不器用な夫
第3章 学校



「あら、国松先生。どうかされましたか?」


30代で朗らかな笑顔を僕に向ける保健医に僕はストレートに質問をする。


「新巻先生、今日はうちのクラスの茅野君は来てましたか?」


僕の質問にニヤリと保健医である新巻先生が笑う。

学生からは人気の高い先生だ。

カウンセリング資格を所持する新巻先生は学生の個人的な相談なども引き受ける。


「茅野さん、来てましたよ。」

「今は?」

「帰りました。丁度国松先生とは入れ違いに…。」

「そうですか…、彼女…、どこか体調が悪いとかでここに?」


僕はあくまでも担任としてのハコの体調を保健医に確認する。

新巻先生はそんな僕にニヤニヤを繰り返す。

今までの僕がわざわざ保健室に授業をサボる生徒の事を聞きに伺う事がなかったからだ。

本当に体調が悪い生徒の場合は新巻先生の方から僕の方へと連絡をして来る。

それをわかってて新巻先生はニヤニヤをやめようとはしない。

僕とハコの婚姻を知る数少ない人物の1人である彼女の態度に僕は苛立ちが湧いて来る。

学生の婚姻を認めてる学校だからこそ保健医にだけはその婚姻の事実を告知しなければならない。

本当に体調不良を起こした際に間違った治療を避ける為の告知。

貧血だと思ってたら妊娠中だったという学生も過去には存在する。

許嫁と一線を越える学生が少なくない学校ならではの保健医の嫌味な笑顔が僕のか弱い精神を刺激する。


「高校1年生、難しいお年頃ですよね?」


彼女を僕を宥めるように話をする。

そんな事はわかってると僕は彼女の言葉に頷く。


「色々と焦る年頃なんですよ。得に国松先生のように自分の感情を上手く隠す大人に対しては焦りしか感じない。だから茅野さんには焦らなくて良いとは助言だけしましたよ。」


それ以上は守秘義務だと新巻先生が口を閉ざす。


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