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僕の美しいひと
第7章 僕の美しいひと
「…清良さん…清良さん…」
原嶋の声で清良ははっと我に返る。
「ああ…すみません。ぼうっとしてしまって…」
慌てる清良に、原嶋はにっこり笑ってお茶を勧める。
「お茶が冷めますよ」
「はい…。ありがとうございます」
清良はカップを持ち上げ、一口飲む。
…外は肌を刺すような寒さだが、屋敷のサンルームはたっぷりと日差しが入りまるで春のような暖かさだ。

アフタヌーンティーの支度を整えると、メイドは直ぐに姿を消した。
…婚約した二人を慮るように、使用人は努めて邪魔をしないように視界に入るところにはいない。

クリームティーは清良の大好物だ。
…元はと言えば、郁未が清良に振舞ってくれたものだ。
プレーンな紅茶がどうしても渋く感じると言ったら、
「これなら飲みやすいかもしれないよ」
そう言って、屋敷の厨房で淹れてくれたのだ。
「甘くて美味しい!」
歓声を上げる清良を、郁未は目を細めて微笑んだ。
「良かったね。少し甘めにしてみたんだ。
お子様向きだけど、僕も子どもの頃からこのお茶が一番好きだ」
郁未の微笑みはすべてを包み込むように優しくて…綺麗で…清良は見る度にどきどきした。
…それを悟られたくなくて、わざとむすっと顰めっ面をしたっけ…。

「…嵯峨様の淹れる紅茶は、本当に美味しいですね」
さらりと郁未の名前を出されて、清良は盛大に噎せた。
「…ちょっ…すみません…」
ごほごほと咳き込む清良を、可笑しそうに見ながら真っ白なリネンを差し出した。
「大丈夫ですか?」
「…は、はい…。あの…嵯峨先生にお会いになったのですか?」
ナプキンを口に当てながら、尋ねる。

「ええ。秋頃ですが、学院をお訪ねしました。
貴女にプロポーズするつもりですとお話ししたのです」
「…そうしたら?」
「何も仰いませんでした」
「…そうでしょうね」
…そういうひとだ…。
「けれど、嵯峨様は貴女を愛しておられるのだと思いますよ」
感情の読めない声と表情で告げられる。
「…多分、そうだと思います」
…あの口づけがそう語っていた…。
…だけど、彼が語ることはない。
それが自分への愛と思い遣りゆえだと、清良は分かっていた。
…だから、どうすることもできないのだ。

そしてなんとも不思議なのは…。

「…あのう…原嶋様。
貴方はどうして私にプロポーズなさったのですか?
…私が嵯峨先生を好きなのをご存知なのに」

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