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僕の美しいひと
第7章 僕の美しいひと
「関係ありませんよ。私が貴女を愛していることが大切なのですから…」
飄々とした様子で、原嶋は両手を広げて見せた。
「…はあ…」
…相変わらず、読めない男だった。

…原嶋は不可思議な男だった。
再三プロポーズをする彼に、自分は好きなひとがいるのだと断った。
すると彼は、まるで楽しげに語った。
「…嵯峨様ですか?
…馬場でキスをされていましたからね」
「ちょっと!やめてよね!お母様がまだ近くに…」
慌てて原嶋に飛び掛かりその口を手で塞ぐ清良に、原嶋は破顔した。
「そういうところですよ、私が貴女を好きなのは。
…飾り気がなくてお転婆で…頑張って猫を被ってもガサツで…」
「はあ?」
むっとして眉を顰める清良の手を素早く取る。
「…けれど誰よりも美しい…。それは貴女が強く懸命に生きてきた証だ」
「…原嶋様…」
原嶋は清良の手を握りしめ、その雄々しい野性味溢れる眼差しで見つめた。
「私は貴女の本当の過去を知っています。
育ての母親が亡くなったあと浅草で一人で懸命に生きてきた貴女を…」
はっとして手を引こうとした清良を思いがけず強い力で引き留められた。
「そんな貴女を私は美しいと思います。
生きるために必死にもがいて闘ってきた貴女を、私は共感します。
…私も子どもの頃に地獄のような生活をしてきましたからね」
さらりと告げた原嶋の瞳には、息を呑むような荒涼たる闇が広がっていた。

原嶋は真摯な表情で、穏やかに語りかけた。
「…貴女が嵯峨様を愛していてもいい。
私を愛していなくてもいい。
私を嫌いではないのなら、私と結婚してください。
その気になれないのならば、夫婦生活もなさらなくて構いません。
…私は貴女を生涯守り、必ず幸せにします。
私にはそれだけの力があると自負しております」
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