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僕の美しいひと
第7章 僕の美しいひと
笙子は静かに岩倉に歩み寄り、微笑みかけた。
「ありがとうございます。千紘さん」
笙子の肩に、愛おしげに手にしたカシミヤのショールを掛ける。
「冷えてまいりましたので、お持ちしましたよ。
…笙子さんは本当に着物が良くお似合いだ」
笙子の姿に眼を細めたのち、郁未に端正な眉を上げてみせる。
「嵯峨先生、お出かけですか?」
郁未が答える前に、笙子が楽しげに言った。
「花嫁様を奪いにいらっしゃるのですよ」
岩倉が、わざと大袈裟に眼を見開く。
「なんと…!紳士のお手本のような嵯峨先生が!
…これは雪が降るはずですね」
…しかし直ぐに、いつもの穏やかな微笑みを浮かべた。
「…私はいつも嵯峨先生を応援していますよ。
周りが何と言おうと、貴方の味方です」
笙子が嬉しそうに岩倉を見上げ、その大きな手をそっと握りしめた。

「…ありがとうございます。岩倉先生。
行ってまいります」
「行ってらっしゃい、郁未さん。
貴方と清良さんのお幸せを祈っておりますわ」
二人に恭しく一礼し、郁未は確かな足取りで玄関のドアを押し開けた。



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