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僕の美しいひと
第7章 僕の美しいひと
「…清良…!」
…清良は息詰まるほどに美しかった。
古典的に結い上げた黒髪に真珠のティアラを付け、その根元から白いベールを長く垂らし、純白の総レースの清楚なウェディングドレスを身に纏っていた。
うっすらと化粧した貌は咲き初めし白百合のように薫り高く気高く、郁未は思わず見惚れた。

…けれどその美貌は硬く強張り、無表情で、心の内を窺い知ることはできなかった。

招待客の騒めきが多くなる前に、郁未は意を決して叫んだ。

「…私は、この結婚に異議を唱えます!」

最前列に座った高遠侯爵夫妻が、驚愕の表情で郁未を見つめていた。
郁未は心の中で、夫妻に詫びる。

目を転じると、清良の傍らに威風堂々たる体躯と物腰をした新郎…原嶋の姿があった。
原嶋は少しも慌てる様子もなく怪訝そうな表情をすることもなく…寧ろどこか面白がっているような余裕の笑みすらを浮かべ、郁未を見つめ返していた。

「…貴方は?」
不意の闖入者に困惑したように神父が尋ねた。
「突然、申し訳ありません。ご無礼をお許しください。
私は嵯峨郁未と申します。
…まず、はっきりと申し上げたいのは、このお二人には何の落ち度もございません。
ただ…神の御前で、私の胸の内を告白したいだけなのです。
…よろしいでしょうか?神父様」
この見るからに品の良い敬虔そうな青年に、神父は拒否する意思を持てなかった。
「…許しましょう。貴方は何を告解されたいのですか?」

郁未は清良に正面から向き直った。
「清良、好きだ。君が大好きだ。愛している。
…こんな単純な言葉すらも躊躇し続けた僕だ…。
僕は情けないほど、弱い人間だ。
だから僕が君に愛されるに値する人間かどうか、自信はまったくない。
けれど、僕は君を愛したい。一生をかけて愛し抜きたい。
君を…君を生涯守り抜くから…君を決して傷つけないように、僕が守るから…。
僕と結婚してください…!」

騒めいていた場内が一瞬にして、静まり返った。

清良の形の良い唇が、震えながら開かれた。

「…嫌だよ。そんなの…」
静まり返った場内が再び、喧騒を帯びた。

郁未は落胆に肩を落とした。
…そうか…。やはり、駄目だったのか…。
清良は、もう原嶋を愛していたのか…。

…打ちひしがれた郁未の耳に、その声は優しく届いた。

「…あんたに守られるなんて嫌だよ。
あたしが、あんたを守るんだから…」

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