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第2章 夜の聖母

貴和子の艶やかな黒髪がはらりと解け、白いシーツの上に散った。
形の良い細い眉が切なげに寄せられる。
郁未の手が貴和子のドレスの胸元に掛かる。
…遠慮勝ちに止まったその手に手を重ね、貴和子は己れの乳房に誘う。
「…触って…郁未さん…」

貴和子の乳房は柔らかく、豊かであった。
強く握りしめると、女は小さく呻いた。
郁未の中で、眠っていた熱く激しい獣性が目覚める。
貴和子にのし掛かり、荒々しく唇を貪る。
「…んっ…は…ああ…ん…」
掠れた喘ぎ声…。
蠱惑的な香水の薫り…。
華奢なうなじに口づけを落としながら、ドレスを脱がす。

貴和子は、自らもしなやかに身体を捩りながら衣服を脱ぎ捨てた。
…繊細なレースの黒いシュミーズに雪のように白い肌が映える。
華奢な肩紐を滑り落とし、素肌を晒させる。

…白磁のように青白いまでに美しい肌…豊満な乳房…。
胸の尖りは茱萸のように紅く熟れていた。

郁未の熱い視線を受けて、貴和子が乙女のように一瞬恥じらう。
「…もう年増よ…。あまり見ないで…」
「いいえ、とても綺麗です。
…こんなに綺麗な身体を…僕は初めて見ました…。
僕は今、貴和子さんを抱いた方々に嫉妬しています」

「…そんな優しいことを仰らないで…」
貴和子が少女のように涙ぐみ、そんな自分を振り払うように郁未を引き寄せると、大胆に口づけを仕掛けた。
そして、郁未の上に馬乗りになるとその下肢の衣服を寛げる。
郁未の若い牡を弄り、握りしめる。
「貴和子さん…！」
息を飲む郁未に淫らな眼差しをくれ、囁く。
「…もう何も考えないで…。
ただ…私を抱いて…思うがままに…。
私も貴方を抱くわ…。淫らな獣みたいに…愛し合いましょう…」

…貴和子の言葉は秘められた悦楽の扉を開く呪文のようだった。
郁未は貴和子に優しく引き摺られるように、その白く美しく…例えようもないほどに淫靡な身体に溺れた。
二人は互いに手を取り合いながら、暗く湿った快楽の沼に沈み込み…最後にはひとつに甘く溶け合っていった…。