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僕の美しいひと
第2章 夜の聖母
…貴和子の身体は、素晴らしかった。
どこまでも柔らかくしなやかに郁未を受け入れた。
女を知らぬ郁未には、それは痺れるような激しい快楽を齎した。

貴和子は淫蕩に応えながら、何度も郁未を欲しがった。
幾度も体位を変え、濃密に愛し合った。
郁未の身体の上で、まるで揺籃に揺られるように淫らに細い腰を揺らめかせ、郁未の若い牡を貪った。

貴和子の花陰は熱く天鵞絨のように滑らかに、郁未を締め付け、呻かせた。
その身体は、郁未に快楽と同じだけの安らぎと優しさを与えた。
淡雪のように白く柔らかな肢体は、郁未を慰撫するように身も心も包み込んだ。
郁未の苦悩と哀しみは、貴和子の愛撫と温もりで静かに癒されていったのだ。

激しく愛し合ったのち、互いに一糸纏わぬ姿のまま褥に抱き合う。
「…郁未さん、貴方はもう苦しまなくて良いのよ」
郁未の胸に抱かれながら、そっと告げた。
「…貴和子さん…」
「…貴方は若いわ。貴方の人生は始まったばかりよ。
ご自分に自信を持って…。
…それから、希望を持って生きていらして…」

…まるで十年前、ワルツを踊った夜のようだった…。
郁未は熱く込み上げてくるものを、堪える。
「…貴和子さん。…貴女はいつも僕を励ましてくださるのですね…」

郁未の胸の中から貌を上げ、貴和子は微笑った。
…それは、穢れのない聖女のような微笑みであった。
「…貴方はいつまでも、私の可愛い郁未さんだからよ」
まるで聖母のように、静かに囁いた。
「…貴和子さん…僕は貴女を…」
貴和子はその先の言葉を言わせなかった。
しなやかに身を起こし、再び郁未の脚に絹のように滑らかな脚を絡めると、美しく淫蕩に笑った。
「…さあ、時間が惜しいわ。
まだ、夜明けまでには間があるわ…。
もう一度、愛し合いましょう…」
…貴和子のしっとりとした花陰が郁未の若い牡に押し付けられた。
郁未は黙って女を引き寄せ、荒々しく口唇を貪り、再びその淫らに熟れた優しい身体に身を沈ませていった。


…翌朝、目覚めると貴和子の姿は何処にもなく…あの蠱惑的な香水の薫りが仄かに郁未の身体に残っているのみであった。
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