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僕の美しいひと
第3章 じゃじゃ馬ならし
…何を怒っているのだろう…。
郁未は訝しがる。
「…ああ。…まあ、母も心配してくれているし…。
でも、会うだけだよ。
再三お膳立てしてくれた母の貌を潰すわけにはいかないからね」
「でも、そのひとがいいひとなら結婚するんだろう⁈」
黒眼勝ちの清良の瞳が苛立たしげに光った。
「い、いや…それは分からないけれど…そりゃ、いいひとなら…ね…」
清良の剣幕にたじたじになりながら、郁未は答えた。

「あっそ!」
清良が唇を真一文字に結ぶと、ランプを郁未に押し付けた。
「女子寮に異常なしです!失礼します!」
「き、清良?どうし…」
清良の怒りの意味が分からずにおろおろする郁未を残し、ずんずんと廊下の奥に消える。
「清良!待ちなさい!」
慌てて声を掛ける。

すると不意にくるりと振り向き、盛大にあかんべーをして見せた。
「見合いでもなんでもすればいいじゃん!バカッ!」
捨て台詞を残すと、清良はあっという間に姿を消した。

「…何を怒っているんだ…?」
…あとには、狐につままれたような貌をした郁未が一人残されたのだった…。
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