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僕の美しいひと
第5章 新たなる扉
…そうして一カ月は瞬く間に過ぎた。
学業やテーブルマナーは鬼塚と郁未に、言葉遣いや所作、ドレス捌き、着物の着付け、化粧の仕方などは笙子に、それぞれ猛特訓を受けるうちに日々は飛び去るように過ぎていったのだ。

「…まあ、こんなもんかな。
山猿が野うさぎくらいには大人しくなったんじゃないか?」
鬼塚がにやりと皮肉めいて笑った。
「野うさぎってなんだよ、鬼塚!
ふざけんじゃないよ、オヤジ!」
食ってかかる清良に郁未は額を抑え、窘める。
「…清良。頼むよ。
高遠侯爵家は名門貴族だ。
ご親戚には宮家に嫁がれた方もおられる。
伊津子さんは公家のご出身だ。
…これからご親族の集まりなどもたくさんあるだろうし、その方々と交流も頻繁に結ばなくてはならないだろう。
付け焼き刃では済まない場面がたくさんあるのだよ」
「げっ!」
「清良」
「はあい」
「はい、は短く」
「…はい」

神妙になった清良に、柔らかく微笑む。
「…けれど君はとても良い子だ。
賢いし心優しい。
…何より美しく天性の気品に満ちている。
見る人を魅了する輝かしい美しさは、何よりの財産だ。
…自信を持って高遠家にゆきなさい」
「…嵯峨先生…」
清良の白い頬が、薔薇色に染まった。

鬼塚は傍らの笙子に眼で合図し、二人はそっと院長室を出た。
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