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僕の美しいひと
第5章 新たなる扉
「ワ、ワルツ?…あたし、まだダンスなんか…」
たじろぐ清良の手を優しく握りしめる。
「…君はいずれ直ぐに社交界にデビューしなくてはならない。
ワルツは必須教養だ。
…まずは音楽なしでやってみよう。
さあ、僕の足型を真似して…あとは、僕の動きに身を任せて…」
郁未のしなやかな腕が、清良のほっそりとした腰を抱く。

…二人の距離が近い…。
郁未の細身だが引き締まった身体の筋肉を感じる。
温かな体温に、身体全体が包み込まれる。

…前に…先生に抱きしめられたときみたい…。
身体の中から、甘く胸が締め付けられるような情動が生まれる。
清良は、郁未の腕をぎゅっと掴む。

「…1、2、3、1、2、3…。
そう…。上手だよ」
郁未のリードは巧みだった。
初めての清良を滑らかにいざなうように軽やかに一緒に踊ってみせた。

「…嵯峨先生…、ワルツ…上手いんだね…」
「そうかな。…あまり自信はないよ。
…でも…昔、あるひとに言われたんだ。
貴方の踊りは優しいわ…自信を持って踊りなさい…て」
郁未の瞳がふと懐かしい追憶を映すような色を帯びる。
清良の胸がちくりと痛む。
「…誰?」
「うん?」
「…好きだったひと?」
郁未の唇が柔らかな弧を描く。
「…そうだな…。好きだったのかもしれないな…」
「…今も…好き?」
こわごわと尋ねる。

切れ長の優しい瞳が細められる。
「…今は美しい想い出だ…」
…今は僕は…
言いかけた瞳が清良を捉える。
息を飲む清良の瞳をふっと避けるように朗らかに微笑み、そっと手を離した。

「…さあ、では音楽をかけて踊ってみよう…」
そう言いながら、郁未は清良から離れた。

…美しく伸びた男の背中を見つめる。

…このひとのこと…あたしは知らないことばかりだ…。
涙ぐみたいような想いに囚われ、古めかしい蓄音機にレコードをセットする郁未の背中を見つめ続ける。






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