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MILK&honey
第13章 「いつでも私のうちに来て……?」

 かーさんは、物真似の芸人さんだ。
 そして、今は、売れてない……と思う。

 お家もあるし、お金には、困ってなさそうなんだけど。
 最初に会った頃から今まで、ネットで検索しても一度も出てこない芸人さんなんて、売れてるはずが無い。

 すごく上手で才能もあるから、そのうち売れるようになるかもしれない。
 でも、もしかすると、もっと売れなくなるかもしれない……。

 そしたらきっと、ここに住めなくなっちゃうんじゃないかな。家賃とか高そうだもん。
 で、お風呂の無い四畳半のアパートとか、床が抜けそうな一軒家とかに引っ越さなきゃいけなくなるかも……


『るりちゃん。今までありがとう。俺、ガスコンロ無いとこに引っ越すんだ。ご飯の材料費も出せなくなるから、もうご飯作って貰えない……』

『かーさん……そんな事言わないで……今度は、いつでも私のうちに来て……?』


 志望動機の紙を前にして、思わずそんな事を考えちゃって。
 頑張らなきゃ!!って思って、つい書いちゃっただけなのに。

 反論とかして誤魔化してたら、お兄ちゃんが、すまなそうに言った。


「その『浮き沈みの激しい職業』って、お前の嫌いな僕の仕事の事だよな?」


 えっ。


 ……ごめん、お兄ちゃん。
 私、お兄ちゃんは、別に……


 ……って言って「じゃあ何なんだよ」ってなったら、恥ずかしい。
 仕方ないから、お兄ちゃんの話に乗った。

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