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MILK&honey
第5章 名前、呼んだら駄目?

「……どうしたの、それ」
「……」

 ブラウスの背中が、汚れている。これは、何だろう……絵の具とかじゃなくて、

「……卵?」

 思い当たる物を呟くと、るりちゃんが握り締めたカーディガンに、ぽたぽたと涙が落ちた。

「ちょっと待ってて!すぐ戻る」

 クローゼットをひっくり返して、目当ての物を探し出す。貸せる服なんて……貸しても自分が邪な気持ちにならなさそうな服なんて、この位しか無い。
 それを持ってリビングに戻ると、るりちゃんがこっちを見た。
 濡れた睫毛、潤んだ目。
 見ていたらいけない気持ちが湧きそうで、思わず目をそらす。

「これ、着て。……それは、脱いで」
「えっ」

 るりちゃんが、動揺する。
 動揺しないで欲しい。俺にもうつるから。

「……洗濯して、乾かしたげるよ。そのままじゃ帰れないし、着てて気持ち悪いだろ?」

 どうして付いたか分からない卵は、生地に染み込んでねっとりと固まりかけていた。

「洗面所、こっち。覗かないし、何にもしないから……こんなジャージで、悪いけど」

 泣いたからか、ぼうっとしてるるりちゃんを、てきぱき立たせて着替えと一緒に洗面所に押し込む。

「脱いだら、置いといて。で、着替え終わったら、戻って来て」

 そう言うと、自分が絶対覗いたり出来ない様に、さっさと逃げ出してキッチンに向かった。
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