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MILK&honey
第5章 名前、呼んだら駄目?

   *

「……お邪魔します」
「はい、いらっしゃーい」

 二人で、内玄関を入る。
 二人でエレベーターに乗る。
 並んで廊下を歩く。
 るりちゃんの気配を背後に感じながら、部屋の鍵を開ける。

 ずーっと、無言だ。緊張する。るりちゃんからハリネズミみたいな警戒心を感じる……。

「巧んちより、散らかってるけど……間取りは同じでしょー?そのへんに、適当に座って」
「……はい。」
「なんか飲む?」
「いいえ」
「椅子、座らないの?好きなとこに座って良いよ?」
「……ここで良いです」

 るりちゃんは、床にぺたんと座った。

「あのさ」
「はい」
「……姫ちゃんが言ってた『そんな格好』って、どういう事?」
「!」

 るりちゃんが、俯いたまま、びくっとした。

「また余計なお世話でゴメンね。巧、まだ帰って来ないし……なんか困ってて、巧の代わりに手伝えるなら」
「……」
「どうして、カーディガン着てるの?」

 るりちゃんのカーディガン姿は、可愛い。見れて本当に良かったと思う。
 でも、今日は汗ばむ位暖かい日だ。暑い日と言っても良いほどだ。巧を待ってるうちに、肌寒くなって着た訳でも無いだろう。こんな陽気の日に、OLならともかく高校生がカーディガンを持ち歩いている事が、不自然だ。

 るりちゃんは唇を噛んで、何も言わずにカーディガンを脱いだ。
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