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MILK&honey
第5章 名前、呼んだら駄目?

   *

「光?るりに構うなって、言ったよね?」
「た……」

 ドアを開けるなり、巧は言った。

 巧さん。怖いです。
 目が本気だ。本気の殺気を感じる……。

 しかし、前から殺気を浴びせられても、実はそれほど堪えてない。後ろが、ほんわかあったかい。
 俺の後ろに隠れて……つっても俺は小さいからはみ出てながら、玄関まで付いて来た、るりちゃん。
 ぎゅっ、と袖を掴まれてる感触がする……気が遠くなりそうな、幸福感と高揚感。
 るりちゃんが身じろぎする気配で、心臓が跳ねる。
 ……かっわいいっ……。
 いかん。ここで気絶してはいけない。なけなしの気力を振り絞る。

「黒田さんに聞かなかった?制服が汚れちゃったらしくて、友達と二人で巧を訪ねてきたけど不在だったからウチで待つことになって……今洗って乾かしてるよ、制服のブラウス」

 説明してる間に何カ所か、巧の眉がぴくっと動いた。制服が汚れたとか、ウチで待つことになったとか、洗ってるとか、制服とか、ブラウスとか。
 妹がどんな目に遭ってるのか心配ですよねお兄さん、という単語ばかりだ。マズい。

「るり」
「はい」

 前から悪魔の声が、背中の後ろからは、天使の声が響く。
 妙なる響きが背骨を伝って、脳天を撃ち抜かれそう。耐えろ俺。

「制服、もう乾いてるだろう。取って来い。うちで着替えて帰ろう、タクシー呼ぶから」
「……いやっ。」

 俺の背中にきゅっと張り付く、るりちゃん……。
 ブラボー、兄妹喧嘩。もっとやれ。
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