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借金のカタに妻を差し出しました
第2章 妻を貸します
約束の日が来た。

瑞樹は、この1ヶ月、大井綾から矢那の事を色々聞き出そうとしたが、はぐらかせてこれと言った情報を得る事はできなかった。

矢那自身も店に一度も顔を出すこともなく、昨日和明に、夫婦で12時にAホテルに来てくださいの、電話があっただけだった。

Aホテルはこの周辺では、一番格式のあるホテルで通っており、施設も充実している事で有名であった。

ホテルに行くにあたって、2人は服装に迷ったが、和明はダークグレイのスーツ、瑞樹は独身の時のパーティー用の薄い水色のドレスにジャケットを羽織っていた。

2人を乗せたタクシーは約束の30分前にホテルへ到着した。

タクシーを降りると、ホテルのドアマンが2人の名前を呼んだ。

「平河さまですね。少しお早いのでロビーでお待ちください。」

そう言うと、ドア開け2人をホテルへ招き入れ、ドアをくぐった瞬間、フロント係の女性が2人をラウンジに案内し、

「矢那様から伺っております。12時まで少しお待ちください。御時間になりましたらレストランにご案内いたしま。それまでの間、何かお飲み物をお持ちしましょうか。」

2人は飲み物を断り、そのまま待つ事にした。

12時になった時、先程のフロント係が2人のもとに立ち止まり、

「御時間がまいりましたのでエレベーターの方へどうぞ。」

案内されたエレベーターに乗ると、すでに最上階のボタンが押されており、2人はそのまま最上階まで止まる事なくレストランに到着した。

エレベーターの扉が開くと、ウエイターが立ち、

「平河さま、こちらでございます。」

ウエイターに案内されたのは、個室だった。

2人はこの扉に向こうに、矢那が待っていることを覚悟した。
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