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借金のカタに妻を差し出しました
第2章 妻を貸します
入った個室は、片方が全面ガラスで明るい太陽光と、眼下に広がる街並みを独り占めしている様だった。

矢那はテーブルの横に立ち、2人が入ると深々と頭を下げ、

「本日は、私の我が儘を叶えて頂け、誠にありがとうございます。」

ハッキリと通る声で、矢那は言い終えると、頭を上げ、さあ、どうぞ、と奥の席2人を誘導した。

ウエイターが2人を椅子に着かせると、矢那もウエイターの引いた椅子に座った。

瑞樹は14年前と印象の変わった事と、礼儀正しい矢那に気後れして、上座に座ってしまった事に気付いた。

その様子に気付いた矢那は、いえ、そのままでと、手で示した。

それを見た瑞樹は3人の矢那を考えた。

1人目は高校の同級生の細く、身だしなみを気にしない矢那。

2人目は1ヶ月の間想像していた、お金で人妻を要求する矢那。

3人目は今、目の前にいる、がっしりとした、身なりも礼儀も完璧な矢那。

そんな空想を止めたのは和明だった。

「あの、矢野さん、約束は12時から明日の12時までですが、私は帰った方が・・・」

「いえ、いて下さって大丈夫です。明日の12時にキチンとお返しします。もし、和明さんが帰ると言うのなら、お留めはしません。その時になれば、私がお願いをいたしす。それまでは瑞樹さんの側にいて下さい。和明さんのお好きになさって下さい。」

「は、はい、そうですか。では、しばらく居させてもらいます。」

「それでは、ランチを頂きましょう。飲物は何にします?」

飲物は、矢那に任せると、3人はシャンパンで乾杯をした。

食事の間、矢那は最近起こった町の事件の真相、仕事で起こったエピソード、高校のクラスメート現況など2人を飽きさせる事なかった。

瑞樹が驚いたのは、目立つ存在では無かった矢那が、三年間のクラスメートを全員覚えているのでは無いかと思うほど、名前とエピソードをスラスラと喋る事であった。


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