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お良の性春
第2章    春風乱舞 恋のつむじ風
 そこに、小間物屋のお節が玄関からお鶴を呼ぶ声がした。

 「おば様、ごめんなさい。わたしが一緒にいながら」

 お節はひと言謝った上で、その日の顛末を掻い摘んでお鶴に伝えた。
 お節はなぜ自分が止めに入らなかったのかと、お良を見捨てたような己の行為を恥じた。

 「おば様ごめんなさい」お節は何度も頭を下げた。

 「お節ちゃん、わたしから一つだけお願いがあるの。このことは決して口外しないで下さいね」

 「ハイ、決して」お節は固く誓った。

 最悪の事態を思い描いていたお鶴は、お節の話にホッと胸を撫で下ろした。
 とにかく、娘の体が傷つけられたわけではない。
 とはいえ、衆目に裸身を晒したとは、それはそれで大ごと。娘の心にどれほどの疵を残したことか。

 この事がそのうち噂にでもなって、嫁にいけないようなことにでもなったら。
 その晩、父の伊兵衛と母のお鶴は、娘の身を案じ、まんじりともしない一夜を過ごした。
 
 それにしてもあの早川家の嫡男源一郎殿が、(若気の至りとはいえ、あまりの悪ふざけ)
 伊兵衛は府に落ちぬものを感じていた。
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