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フリマアプリの恋人
第3章 紫陽花のため息
夜の営業を終え、一息ついたのとスマートフォンの着信が鳴り出したのは同時だった。
…今朝、登録したばかりの清瀧の名前が浮かび上がっていた。
澄佳は素早くスマートフォンのボタンを押した。

「もしもし?」
「澄佳さん?清瀧です」
…穏やかなバリトンが鼓膜に伝わり、澄佳はほっと息を吐いた。
「こんばんは。お店は終わりましたか?」
「はい。さっき…」
…このひとと…今日、キスをしたのだ…。
触れるだけの淡いキス…。
思い出すと、胸がきゅんと締め付けられる。
この切ない気持ちを勘付かれたくなくてわざと明るく尋ねる。
「道、迷いませんでしたか?」
電話口で微かに笑う気配がした。
「大丈夫です。もう覚えました。地理を頭に入れるのは得意なんです」
「すごいわ。
私なんか初めての道は迷ってばかりです」
「もしかして、方向音痴ですか?」
「はい…かなり激しいです」
清瀧は声を立てて笑った。
…その温かな笑いに勇気を得て切り出す。
「…今度の金曜日ですけれど…」
「伺っても良いですか?」
遠慮勝ちな声が聞こえた。
「お待ちしています」

窓の外の漆黒の闇に包まれた海を見つめる。
「…翌日の土曜日と日曜日…臨時休業にします」
「え?」
「…清瀧さんと…ゆっくり過ごしたいんです。
この辺をご案内したいし…それから…」
右手で窓を開け放つ。
夜の潮風が髪を優しく揺らし、幼い頃から子守唄のように馴染んだ潮騒が全身を押し包む。

「…貴方と一緒にいたいんです。
一晩中…」
「…澄佳さん…」
驚いたような柊司の声を聴きながら、夜の海を見つめる。

「…ありがとう…。
澄佳さん、貴女が好きです」
やがて返ってきたのは真摯で情熱的な言葉だ…。

…この恋が、どうなるか分からない。
けれど今は…この声に包まれたい…この恋に身を委ねたい…。

澄佳はどこまでも続く射干玉の闇夜に包まれた美しい海を見つめ続けていた。

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