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歳下の悪魔
第1章  後悔



「オッハヨー、優華(ゆうか)っ」
 エレベーターを待っていて、明るい声に振り向いた。
 笑顔で並んできたのは、同じ部署の風間美月(かざまみつき)。
 この会社は大手チェーンの居酒屋や焼き肉屋など、数知れない店を展開している。所属している食品開発部二課では、新メューの成分分析が仕事。近年は、メニューにカロリーや塩分などが明記されるようになったせい。
「あ、おはよう……」
「まーだ、落ち込んでんの?」
「べ、別に。あっ、エレベーター来たよ」
 ごまかすように言い、一緒に乗り込んだ。
 朝のエレベーターは、電車のラッシュ並みの混雑。背が高めの美月が腕を組んできて、私を守るようにしてくれる。150センチほどの私は、そうされないと階が来ても降りづらい。
 それに美月は階の少し前に、「次で降りまーす」と大声で言う。さすがにみんな気付き、降りられるようにしてくれる。
 私は子供の頃から小柄で細くて、おとなしいと言われる性格。普通に食べても太らないのを、周りは羨ましいと言う。一応胸は普通にあるけど、太れない本人にとっては悩み。私には、普通体系の美月が羨ましい。
 童顔のせいでよく20代半ばに見られるけど、私も美月も32歳。
 別の部署で若い子が次々と結婚していく中、置いてきぼりを喰うよう。
 私は3月生まれだから、33歳になるまで後10か月。
 両親には早く孫の顔が見たいなどと、何気に結婚を促されている。出来るものなら、私だって結婚したかった。
 7年も付き合った彼と別れたのは、二ヶ月前。彼が関西方面に転勤になり、結局別れを告げられた。
 美月には「別に」と言ったが、私はまだ彼のことを引きずっている。
「次で降りまーす!」
 14階でドアが閉まると、いつものように美月が声を上げた。無事に15階で降り、食品開発部二課。略して食開二(しょっかいに)へと向かう。
「穂村(ほむら)先輩、風間先輩、おはようございます!」
 ドアを入ると立ち上がってお辞儀してきたのは、瀬名和真(せなかずま)。一ヶ月の全体研修が終わり、一週間ほど前に配属されてきた。



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