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歳下の悪魔
第1章 後悔
22歳で、元気な大学生という感じは抜けていない。身長は、180以上あるだろう。立ち上がって話をすると、私は見上げなくちゃならない。整った顔は、一般的にはイケメン。
「オハヨっ、和真くん。名前で呼んでって言ったでしょ?」
「あ、はい。美月先輩、優華先輩、おはようございます!」
美月に言われ、言い直す所が可愛い。
「慣れてきたー?」
「はい。先輩達には及びませんけど、俺なりに頑張ってます」
美月と和真の会話を聞きながら、和真を羨ましいと思ってしまう。
まだ若くて、熱意に溢れている。そんな頃の自分が懐かしい。
やる気がないわけじゃないけど、毎日同じことの繰り返しに慣れてしまった。でもどんな仕事でも、そんなもんだろう。
ロッカールームへ行き、私服の上に白衣を着る。制服もあるが、事務職と違って長い白衣で隠れるから、みんなも着替えない。
まずは昨日残した書類と、新しく来たデータ確認。
新開発したメニューの写真と説明もあるが、それは正直必要ない。いくら美味しそうに見えても、私達はデータを取るだけ。
食開二のメンバーなら数値を見ただけで大体解るが、それをパソコンでグラフに直すのが仕事。食開の一課にも、解るように。
そこへ、書類を持った和真がやって来た。
「優華先輩。あのお……」
私と美月は、和真の教育係。平野課長から直々に任命され、断れなかったというのもある。
正直、自分の仕事だけでも忙しい。元々課長を合わせても6人しかいなかったのに、食開一課からデータは次々とやってくる。
この課は、全員が理系大学出身。味は分からなくても、データが全てを教えてくれる。
そこへ来た数年振りの新人が、和真だった。
「これ、少しだけ塩分が多くて、ダメってことですよね。でも居酒屋なら若者も多いし、気にしないと思います。本当に、少しだし」
彼の言うことは、最もかもしれない。
「それは、課長に言わないと……」
「何々? どうしたの?」
美月が来てくれて、ホッとした。
「この塩分が……」
「ねぇ。今晩さぁ、和真くんの歓迎会やろうよー。今、立て込んでる仕事もないじゃない? 明日は土曜で休みだしー」