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歳下の悪魔
第4章 目論見(もくろみ)

◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
一時間だけの残業で帰れるなんて、久し振りかもしれない。
その頃には、私も手持ちの仕事は終わっていた。
「お疲れ様でした!」
和真の元気な声にみんな笑っているが、私は胸の奥が痛くなる。
急いで帰る彼をよそに、私と美月、敦子はロッカールームへ行った。
「和真くん、元気でいいわねぇ。仕事も覚えてきたし」
白衣を脱いだ敦子が笑う。
会社での様子は全く違っても、私には悪魔の声にしか聞こえない。明るく元気な好青年の仮面を着けた、悪魔。
マンションに帰りたくない。そう思っても、行く場所はなかった。それに私がいなかったら、来た和真は怒るかもしれない。もっと酷いことをされる可能性もある。
もっと酷い内容は思いつかないが、彼なら何かあるかもしれない。
3人で一緒にエレベーターを降り、いつものように美月は地下鉄へ。私は敦子と一緒に電車に乗るが、彼女は数駅で乗り換えてしまう。
知り合いがいなくなると、途端に恐怖に包まれる。
和真は、かなり先に帰ったはず。でももしかしたら、隠れて待ち伏せているかもしれない。そんなことまで考えてしまう。
電車は朝のようなラッシュじゃなく、痴漢をすれば分かるくらいの乗客。
安心だと自分に言い聞かせ、自宅へと向かった。
家に着いて部屋着に着替え、途中のコンビニで買った弁当を食べる。
いつ和真が来るかと思うと食は進まないが、無理にでも食べなくては体がもたない。元々痩せやすい体質だから、出来るだけ食べなければ。
以前は、自炊をしていた。でも今はそんな元気もなく、途中にコンビニがあって良かったと思う。
外で何か音がするたび、ビクリとする。
怯えても、この部屋にいる限り和真からは逃げられないと分かっているのに。点けていたテレビにも集中出来ず、リモコンで消した。
気が付くと、もう22時。
その気なら、いつもはもう来ている時間。それに今日は、会社で何も言われなかった。
私は少し安心して、シャワーを浴びることにする。どうせ勝手に入って来るんだから、出迎える必要もない。
シャワーを浴びる為に服を脱ぐと、腰の辺りの跡はまだ目立つ。でも、こんな所を人に見られることはない。

