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歳下の悪魔
第4章 目論見(もくろみ)

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和真は午前中、機械を使った分析ばかりしている。念のため教えるはずの美月もデスクへ戻り、自分の仕事をしていた。
機械での分析なら、やり方を覚えれば小学生でも出来る。和真が、機械の扱いに慣れたということだろう。
「優華先輩、お願いします」
機械から出てきたランダムな1/4の書類を、和真に渡された。その時こっそりと、白衣のポケットから出したメモも渡される。
昨夜は気持ち悦った? そう書いてあった。
和真は何喰わぬ顔で、他のメンバーへも書類を配っている。
体が震えた。
すぐにメモを丸めて、ゴミ箱へ入れる。
昨夜とは、オナニーのことを指しているんだろう。彼が知っているはずはないのに。勿論そんなこと、誰にも話していない。
ここでは問い詰めることも出来ず、私にはモヤモヤとした思いだけが残る。
もしかして。そう考えたのは盗聴器。でも和真の家から、聞えるものなのだろうか。車では近いが、距離は大分離れている。
それでも、盗聴器しか考えられない。
部屋に戻ったら調べてみるが、見つかっても勝手に外せば怒るだろう。
和真は、私をどれだけ苦しめれば気が済むのか。今だって、こんなメモを渡されなければ知らずに済んだのに。
会社にいる彼も、私にとっては悪魔。
家でも無防備に出来ないなんて、見えない縄で縛り付けられているようだ。
さっきのメモには、それしか書いていなかった。今晩も来ないと言うことだろうか。
来ないのがはっきり分からないと、また私は怯えながら夜を過ごす。
つい、仕事の手が止まってしまう。
このままでは、仕事も上手く行かなくなる。そのうち、大きな失敗をするかもしれない。
落ち着かないまま、コーヒーを取りに行った。
「みなさんも、飲みますか?」
課長も含めた全員が手を挙げる。
サーバーから出したコーヒーを配り、最後に和真のデスクへ置く。
「優華先輩。ありがとうございます」
にっこりとした、明るい笑顔。
私は何も言わずに自分の分を持って、デスクへ戻った。

