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歳下の悪魔
第5章 事件と有休
月曜の朝は忙しい。
食品開発をする一課の熱心な社員が、土日にもメニューを作ったりするからだ。特に新人に多い。
料理を運ぶ係の愛美も、朝から3度往復してワゴンで運んでいる。
「では、よろしくお願いします」
いつもより丁寧に、愛美が頭を下げて出て行く。
二課のメンバー全員、心の中で溜息をついているだろう。勿論、私も。
「この時期は特に、新人達が頑張るからねぇ」
3つのワゴンを眺めながら、敦子が言う。
「粉砕機と解析機は、全部和真くんに任せていいかな?」
太田に言われ、和真はすぐに作業を始めた。
「はい。大丈夫です」
はっきりとした大きな声で言うと、和真はすぐに作業を始める。
機械にも慣れ手際も良くなっているからと、私と美月が昼の買い出しに出ることになった。
昼が潰れるのは、みんな承知。弁当の太田以外の希望を聞き、社内の売店へ行った。
「ねぇ、優華―。和真くんのこと、嫌いー?」
「ど、どうして?」
美月は雑なようで、案外感が鋭い。
「何かさー。嫌ってるような、態度だよー? あんまり、話さなかったり―」
美月がメモを見ながら、私の持っているカゴにサンドイッチなどを入れていく。
どうしても無意識のうちに、会社で態度に出てしまうのだろう。考えてみれば、彼に笑いかけたこともない。守とは、笑い合ったりしているのに。
「もしかしてー。逆に意識してるとかー?」
「えっ?」
守と和真の焼肉丼がカゴへ入り、急に重くなる。
「だってぇ。彼、イケメンじゃない? 高身長に高学歴。この会社なら、いずれ高収入でしょー?」
昔に流行ったという、三高(さんこう)というやつだ。確かに、それには当てはまっていた。
「何となく……。合わないかな。嫌ってるほどじゃ、ないけど」
「そうなんだー。いい子だよー。明るいし、頭も切れるしー」
「早く戻ろう? 金曜の分も、仕事が残ってるから」
美月を急かせ、会計をしてから二課へ戻った。
「ただいま」
「ただいまー。買ってきたよー。お昼ご飯―」
その声に、守と和真が礼を言う。
渡すのと会計は美月に任せ、私はデスクに座った。早く金曜の分を終わらせなければ。
その後は手分けすると言っても、データの山になりそうだ。