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歳下の悪魔
第5章 事件と有休
「まず2つ、出来ました!」
「金曜の分は、私と美月ちゃんでやるから。太田さん、空いてますか?」
敦子が訊くと、太田は残り2枚のデータを見せて頷く。
私は気が載らずに、毎日仕事が捗らなかった。そのせいで、10枚以上溜まっている。
「じゃあ、お願いします。優華さん。新しいのをやりましょう」
守に言われ、取り敢えず残りを美月に渡してから、和真の方へ行った。
和真も、柔らかそうなメニューからやった方が早いと、学んだようだ。もう粉砕機は動いている。
確かにこうして見ると、イケメンで高身長。新入社員でも、他の会社に比べて給料はいいはず。
まだ頭に残っているのは、和真の住まい。
確実に2LDK以上あり、リビングはかなり広かった。それに、アイランドキッチンも付いている。ブルーレイを観た部屋だけでも、私の部屋くらいあった。うちのキッチンなんて、1人が動くのがやっと。
それに、就職したから住み始めたようには見えない。汚れてはいないが、少なくとも大学時代から住んでいる生活感がした。
親が、金持ちなのだろうか。
大学に通うため、地方から上京する学生は多い。出身地は聞いていないが、彼もそうなんだろうか。
「守先輩。お願いします」
分析機から出てきたデータを、和真が頭を下げて渡す。
仕方なく、私も取りに行った。
「優華先輩。お願いします」
同じく頭を下げられ、私は愛想笑いをする。
また美月に、おかしいと思わせないため。
「解析は私達に任せて。大変だけど、頑張ってね」
笑顔で、労いの言葉も付けた。
「ありがとうございます! 頑張ります!」
爽やかで、仕事熱心な顔。
どうしたら、あんな風に変貌出来るんだろう。
今は、そんなことを考えている時じゃない。そう思い、デスクに戻って解析を始めた。
「え……」
パソコンに読み込ませた所で、画面を見直す。
間違いない。
「課長、大変です!」
立ち上がって言ったのは、守と同時だった。