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幸せの頂点
第2章 栄転



加熱調理されたパスタのトマトの確認をする。

カルパッチョのトマトとは違い、甘味がまろやかになり奥深い味に整ってる。

トマトの甘味が増したというよりも深い味わいへの変化を感じる。

ほのかな酸味が食欲を増し、魚介の本来の味を引き立ててる。


「こっちも…、素晴らしいトマトですね。」


私の味覚の確認かと部長を睨み返す。

部長がニヤリと笑った。


「その料理の生も加熱も同じトマトだと言ったらどうする?」


部長の質問に目を見開く。


「嘘ですよね?」

「いや…、奇跡のトマトってやつだ。」

「まさか…!?」


都市伝説のような噂の存在。

どんな調理にも対応可能な野菜。

味は当然、一流品。

希少な存在であるからと市場にはほとんど出回らない商品。

そんな野菜をこのレストランでは仕入れてる。

その野菜をうちの百貨店で流通する事が出来れば…。

バイヤーとしては是非にでも生産者と話をしたいと思う野菜には違いない。


「そろそろ行くぞ。」


私よりも先にパスタを平らげた部長が言う。

私はまだ3分の1が残ったまま…。


「待って下さい。」

「待たねえよ?昼休みじゃねえんだから…。」


部長に呆れた顔をされた。

確かに昼休みじゃない。

あくまでも、このトマトの存在を私は部長から教わっただけの時間だ。

私を無視して部長が支払いを済ませてる。


「あの…。」


慌てて自分の財布を出そうとすれば部長がまた私を鼻で笑う。


「経費を個人で分散しても経理からは嫌な顔をされるだけだぞ。」


このレストランでの食事は必要経費である以上、私と部長のバラバラで経費の請求するのは無意味だと笑われた。


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