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幸せの頂点
第2章 栄転



「随分と早い昼休みですね?」


嫌味を言ったつもりだった。


「昼休み?そんなもんは取らねえよ。」


苛立ちを私に見せて睨んで来る。

ギラギラとした瞳…。

野生的で強い視線に射抜かれた身体が強張る。

背筋に冷たいものが流れる。

虎の居る檻の中に入れられた感覚に恐怖が湧く。

ゾクリとする。

目を細めて彼を見る。

ただ正面に座ってるだけの人に威圧されている。

怖いのに…。

その厳つく彫りの深い顔に惹き込まれる。

太い首…。

だらしなく緩めたネクタイ…。

何もかもが克とは違う男…。

いや…。

漢というべきかもしれない。

猛々しく雄々しい男…。

絶対的な力で人を平伏させる力を持つ王者のような存在感に見惚れる。


「ほら…、食ってみろ。」


虎が私にお皿を突き出して来る。


「は?」


私を食べそうな勢いの虎に食べろと言われて間抜けな返事を返す。


「時間がねえから、さっさと食え。」


その野太い声に身体が緊張する。


「はい!」


虎から言われるがままにテーブルに置かれた料理を口にした。

トマトとチーズのカルパッチョ…。

トマトで魚介を炒めたパスタ…。

メインの野菜はトマト…。

生であるカルパッチョから味わってみる。


「凄い…、糖度が高い。」


いわゆるフルーツトマト…。

中途半端なフルーツよりも糖度が高く甘味が強い。

酸味はほとんど感じない。

ならパスタのトマトはと考える。

トマトは火を通せば甘味が増す。

問題になるのは皮…。

糖度の高いトマトは皮が厚くなる為に生のサラダに適さない。

酸味を抑え甘味だけを引き出すのは調理法。

175℃以上の熱で酸味を飛ばし甘味だけを引き出す。

一流のお店では調理法によって種類の違うトマトを使い分けるのが当たり前だとされている。


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