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幸せの頂点
第5章 主婦



部長はビールを飲みながら黙ったままなのに…。


「佐伯さん、美優ちゃんとの約束はいつ?」


と隣の女の子がしつこく聞いてる。


「教えない。言えばお前らついて来るだろ?」

「借りは返すって言ったくせに…。」


そんな会話が聞こえて来るだけで苛立ちを感じる。

私には関係ない。

これは私の歓迎会じゃないもん。

早く帰りたい。

克の居る部屋へ…。

これ以上は彼の声を聞きたくない。

野太く重い言葉…。

耳をくすぐられてお腹に響く声を聞くたびに心が不安になり気持ちが苛立つ。

ポンと肩を叩かれた。


「やっぱり疲れてる?そろそろ帰ろうか?」


高崎さんが私に声を掛けてくれる。

その優しい笑顔に苛立ちが消えていく。

帰って克の笑顔を見れば大丈夫だという安心感を高崎さんから感じる。


「すみません、そうします。」

「じゃあ、一緒に出ようか?」


高崎さんと帰ろうと思い部長に挨拶だけをする。


「部長、今日はありがとうございました。そろそろ帰ります。」


私の言葉を皮切りに皆んなが


「お開き?よっしゃ、帰ろう。」


と飲みかけのグラスをテーブルに置く。

女の子達も時計を見て


「やばい!明日は早番だから帰んなきゃ。」


と帰る気満々の声を出す。

呆気に取られてた。

切り替えの早い人ばかりだ。

食べるだけ食べて飲むだけ飲んだら、はい終わり。

こんな歓迎会ってあるの?

呆れたまま居酒屋の外にゾロゾロと出た。


「お疲れっ!」

「お疲れ様でしたぁ。」


皆んなが思い思いの方向へと帰って行く。

私も帰らなきゃ…。

あの人が待つ家に…。

酔ってて少しフワフワしてた。

自分では真っ直ぐに克が待つ家に向かって帰ってるつもりだった。


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