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幸せの頂点
第8章 店長



今も部長はあの人が好き…。

あの人はこの百貨店を辞めた人…。

百貨店は人の出入りが激しい。

高崎さんの奥さんも辞めた人。

それ以外の辞めた人?

どんな人だったのだろう?

何故、辞めちゃったのかな?

今も部長とは連絡を取ってたりする?

私には関係ない。

仕事に集中しなきゃ。

今までに付き合いがあった生産者に連絡を入れる。

在庫に余裕があるなら発注をする。

売り場を安定させて新しい商品を探しに行きたいと考える。

高崎さん達のお陰で惨めな売り上げにならずに済んだとホッとする。

部長の姿はずっと見てない。

だから私は自分の仕事に集中する毎日だった。

水曜日の夜。


「紫乃は明日が休みなの?」


久しぶりに克と夕食を共にした。

あまり土日は休めないから木曜日に休みを取った。

高崎さんは月曜日に休みを取る事が多いと聞いた。


「うん…。」


克とはすれ違いの生活。


「なら、明日はなるべく早く帰るね。」


相変わらずの笑顔と優しさに自分が縛られてる感覚がする。

ベッドに入っても克はすぐに寝息を立てる。

セックスレスな気分に落ち込む。

里緒ちゃん達が羨ましいと言った生活の実態はこの程度だ。

やり甲斐のある仕事…。

素敵な彼氏…。

誰もが羨む立場は隙間だらけの寒い生活。

翌朝に克を見送り洗濯や掃除をする。

他にやる事がない。

お昼前に里緒ちゃん達のショップに遊びに行こうかとか考える。

ジュリの杏奈ちゃんとも仲良くなった。

百貨店内で少しずつ親しくなる人が増えた。

なのに彼の姿が見えなくなる。

まるで幻だったかのように感じる。

なんで居ないの?

あの人に問いかける。


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