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アリョーナの旅路
第1章 アリョーナの旅路
アタシは、フィリップさんとすぐに離婚をしたいと思っていましたが、アタシの前に大きなカベが立ちはだかっていました。

ひとつは、フィリップさんのお母さまの介護の問題がありました。

フィリップさんが家出をしまして行方をくらませたその上に、お父さまと妹がどうしようもなくなってただしくしくメソメソと泣いているだけでありましたので、全くアテにはできませんでした。

そんな時は、コートダジュールに住んでいる二組のお兄さん夫婦に介護のお願いをしたいところありますが、二組のお兄さん夫婦は自分たちの生活のことで頭がいっぱい(…と言うておいて、ほんとうは自分勝手ばかりをしていると言うことにしておくわ…)になっていたので全くアテにできませんでした。

そしてもうひとつは、フィリップさんのお父さまと妹の心のケアの問題や他にもフィリップさんの家庭を取り巻いている問題が山積されていましたが、アタシは助けることはできません。

そして、8月29日のことでありました。

アタシが朝のバイトをしているサンルイ病院のリネン室にて…

アタシは、一緒に仕事をしていました60代の女性からフィリップさんとよく似た男の人が、区役所の制服を着ている女性と密会をしているところを見たとアタシに話しました。

60代の女性は、アタシに「いいにくい話なのだけど…」と口ごもった声で言った後にアタシにこう言いました。

「アリョーナさん…フィリップさんのことなのだけどね…この最近なのだけど、区役所の勤務態度が悪い上に…区役所の女性職員とデキていると言うウワサを小耳に挟んだのだけど…こんなことをアリョーナさんに話してよいのかどうか迷ったのだけどね…」

アタシは、年輩の女性からのフィリップさんが区役所の女性職員とデキている話を聞いてしまいましたので、気持ちが動揺していました。

さらにアタシはこのあと、年輩の女性から信じられない言葉を聞きまして、乳房(むね)の奥がズキンと痛みました。
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