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復讐の味は甘い果実に似て
第6章 絶望へのいざない ~ひかるの告白~
 案の定、部屋のなかでは、恵梨の嗚咽まじりの謝罪攻勢が続いていた。
「あの、先輩……一緒にお風呂、入ってくれませんか?」
 あたしはできる限りの媚態を浮かべて、先輩を誘った。
 誘った、というよりも、先輩の手を取って、バスルームに引っ張っていった、という方が正しいかもしれないが。
 
 これ以上、恵梨に何か話されると、先輩が恵梨に情けをかけかねない、と思ったのだ。
 それに、あたしは恵梨の目の届かないバスルームで、先輩に慣れておきたかった。
 さもないと、あたしはベッドの上でガチガチに緊張した冷凍マグロと化してしまい、恵梨から嫉妬どころか憐れみを受けてしまうだろう。

 先輩があたしに背を向けて服を脱いでいる間、あたしは湯船に湯を張って、先輩を待っていた。相変わらず、体にはがっちりとタオルを巻いたままで。

「あ、あの、背中流します。」
 腰にタオルを巻いて入ってきた先輩を椅子に座らせて、あたしは先輩の背中にシャワーをあてた。

 先輩の背中はサークルの男の子たちのように日焼けしていなくて、華奢に見えた。
 だが、その筋ばった肩の周りの筋肉は、明らかに男の人の背中だ。
 あたしはタオルにボディソープを付けると、タオル越しに、先輩の背中を恐る恐る擦り上げていく。

「……すまないな、こんなことに巻き込んで。」
 あたしに背中をむけたまま、先輩がポツリと言った。
 背を丸めてうつむいたままの先輩の言葉が、あたしに突き刺さる。
 恵梨の涙を目の前で見て、気が萎えてしまっているのだろうか。

「今さら……そんなこと……。覚悟が揺らぐようなことを言わないでください。」
 あたしの言葉に先輩の背が少しだけ震えたが、あたしは背中を洗う手を止めない。

「……あたし、そんなに嫌でもないんです。実は。」
 えっ、という声がして、先輩があたしを振り返る。
 あたしは思わず、自分から出た言葉に、先輩を正視できなくなった。
「ええっ……と、ああ、ほら、首筋が洗えないじゃないですか、前、向いててください。」
 あたしは先輩の顔を無理やり前に戻すと、そのまま言葉を続けた。

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