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復讐の味は甘い果実に似て
第8章 復讐の行方 ~明日香の告白~
 次は、先輩だった。
 わたしは電話で、先輩をいつものカフェに呼び出した。
 学内の掲示板で確認したが、先輩はもう修士論文の審査も終わって、あとは修了式を待つだけ、という手持無沙汰な状況のようだった。

「先月はいろいろと迷惑をかけてすまなかった。で、今日の用は?」
 相変わらず、先輩は淡々とした口調で話しかけてくる。

「先輩に、ひとつだけ、確認したくて。」
「確認? 何を?」
「……先輩は、恵梨に復讐して空しくなれましたか? 自分の心の中の恵梨を、徹底的に壊せましたか?」
 わたしは先輩の目を見据えて言った。
「……何が言いたい?」

「たしか、先輩は、わたしの彼にこういったはずです。僕は建設じゃなく徹底的に破壊すると。破壊して空しくなるんだと。空しくなれば、僕は前に進めると。わたしたちを道具にして、恵梨に復讐して、そうなることができたんですか?」

「……自分で嫌になるけど、僕はだらしない男だ。君の彼に啖呵を切ったことの半分もできていない。まだ、恵梨のことも壊せてないし、前に進むこともできていないよ。今さら、君に隠しても仕方ないし、もう、君たちもわかってるとは思うけど。」

「それじゃ、困ります。わたしたちはいったい、何のために、あなたに協力したんですか?確かに、わたしたちは道具でしょう。だけどね、道具にだって、プライドはあります。」

「……申し訳ないことをした。本当に。」
 そして、先輩はわたしに深く頭を下げた。

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