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第9章 さよならという儀式　～ひかるの告白～

　そして２泊旅行の当日、あたしたちは１５時に大学の最寄り駅に集まっていた。
「じゃあ、行こうか。」
　先輩が出発を促して、あたしたちは電車に乗り込んだ。

　電車の中で、あたしたちは運よく４人が相向かいになった席を確保できた。
　だけど、あたしたちは何も言葉を交わさない。
　あたしと明日香はスマホをいじり、恵梨は物思いに耽り、先輩は本を読んで車内の時間を過ごしていた。
　
　考えてみれば、不思議な小旅行だった。
　男の人が１人と女の子が３人という不思議な組み合わせ。
　しかも女の子３人は、全員が、その男の人に抱かれているのだ。
　
　それだけ聞くと、まるで先輩はハーレムの王様だが、その王様はずっと押し黙ったまま、難しそうな本を読んでいるだけで、全く楽しそうには見えない。
　多分、車内の人も、これからあたしたちが２泊で温泉旅行に行くなどとは絶対に思わないだろう。
　結局、あたしたちは会話らしい会話もないまま、２時間ほどかけて目的地の温泉街に到着した。