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復讐の味は甘い果実に似て
第3章 復讐への階段 ~明日香の告白~
 わたしが嫌なことを思い出している間も、ひかるは意思を固めているようだった。
「もういいよ、明日香。あたし、決めたから。今日はもう講義ないし、いまから産婦人科に行くよ。」
 もう、ひかるの決意は全く揺らぎそうにない。
 まるで結論が出ないわたしはとりあえず、ピルの処方だけは受けることにして、ひかるに同行することを決めた。

 指定された産婦人科で簡単な問診のあと、処方された1カ月分のピルを受け取り、わたしとひかるは駅までの坂道をゆっくりと歩いていた。
 ピルの処方自体は拍子抜けするほど簡単だったけど、こんなことを自分の彼に黙って進めている、ということ自体に気がとがめて、わたしの足取りは重かった。

 わたしとは対照的に、ひかるはもう産婦人科で完全に覚悟を決めてしまったのか、足どりもしっかりしている。
 ああだこうだと考えるだけで、何の結論も出せないわたしとは、えらい違いだ。

「……明日香はどう考えてるかわかんないけど、先輩って多分、悪い人じゃないよ。」
 前を歩いていたひかるが、わたしの方を振り返って言った。
「いや、わたしだって悪い人とは思わないよ、でも……」
「もともと先輩は、復讐なんてするつもりはなくて、恵梨に本当のことを言ってほしかっただけなんじゃないかな。だから恵梨の前で、あんな賭けを持ちかけて、あたしたちを使って復讐するぞ、って言ったんだと思う。」

 ひかるの見方は多分、正しいのだろう。
 言われてみれば、先輩は、賭けの話を持ちかけてからも、トイレに言ったり、最終確認をしてみたり、やたらとわたしたちに時間を与えていた。

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