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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第8章 縄秀と看護師
≪彼が縄師?≫

「あの、ここですか?」
「そうだよ」

小鹿が有田と雪乃を連れて来たのは、どうみても「縄師のエロ爺」の家には見えない、「金沢小児科」の看板がかかる清潔感たっぷりの家だった。

「浅丘正巳が小汚ねえ家に入ってみろよ。「え、ウソー」って若い女の子が騒ぎ立てるだろう」
「はあ、そうですけど」
「縄秀の本名は金沢(かなざわ)秀夫(ひでお)、小児科のお医者さんなんだよ。昼間は子供たちの神様みたいだが、夜はスケベな奴に変る。こいつも表と裏の顔を使い分けているんだよ」
「真面目エネルギーで溜まったストレスがスケベエネルギーに変る、物理の『エネルギー保存の法則』ですね」
「いいこと言うね、有田。お前も調子が出てきたな」
「へへへ。小鹿さんには随分と鍛えられましたからね」

有田が得意がっていると、ドン!と脛に蹴りが飛んできた。

「まだまだよ、有田ちゃん」

雪乃のつま先蹴りだった。

「少しは手加減して下さいよ。雪乃さん」

有田が脛を押さえている間に、玄関が開き、黒縁のメガネを掛けた中肉中背の40代の男が、「やあ、小鹿さん」と片手を上げて出てきた。

「秀ちゃん、忙しいところ悪いね」

小鹿はそう言いながら、「ほら、あの二人だよ」と顎で有田と雪乃を紹介していた。

「ははは、素顔の方がいいね、お二人さん」

ニヤリと笑う「金沢秀夫」先生は小児科医の顔から「縄秀」に変っていた。

「あ、いや、どうも」
「こんばんは」

有田と雪乃はペコンと頭を下げていた。
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