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レディー・マスケティアーズ
第10章 ポルトス&ダルタニァン ――パークサイド・パレス
           
               *

 その光景の遥か上方、パークサイド・バレスの一〇二四号室に明かりが灯った。電気を点けたのは、桜井美里だ。
「ううん」
死んだはずのポルトスこと山岸彩也子が、ベッドから起き上がり、大きく伸びをする。
「どうやら、うまくいったみたいね。だけど、その変装の特技は大したもんだわ。ダルタニァン。いえ、本名で呼ぼうかしら。三好綾香ちゃん」
 最初の作戦会議の日、ポルトスたちがスクリーン越しに見た彼女――木庭浩一とプロレスごっこを演じていた色白の牝犬――が、まさかダルタニァンだったとは……。
「ありがとうございます。ポルトス先輩。だけど、『ちゃん』付けはやめてください」
桜井美里に扮した三好綾香が、特殊ゴム素材のマスクを剥ぎ取った。
「それと、わたしの特技は変装じゃありません。特殊メイクです。SFX(Special Effects Makeup)。専門学校で二年、ハリウッドの映画会社で二年学びました」
綾香が唇を尖らせた。
「なるほど。あんたに頼めば仮死偽装だけじゃなく、わたしも特殊メイクで別人にしてもらえるのかしら」
「はい。フランケンシュタインでもアインシュタインでも」
 ポルトスが笑った。
「それはそうと、このミッションのことをどこで知ったの? どうやら、わたしたちより先のようだけど」
 三好綾香はまばたきもせず、ポルトスをじっと見つめていた。そして頷いた。
「美里は、わたしの高校時代からの親友でした。卒業して進路が別々になっても、いつもいちばんの仲良しでした」
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