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レディー・マスケティアーズ
第13章 エピローグ ――十月の終わり
 ミッションの終了を祝う宴を終えた翌朝。それぞれの思う場所に繰り出した銃士隊の面々と別れ、松永は一人山下公園に向かった。
 広大な公園には、朝から家族連れや観光客の姿があふれ、海を臨む眺望を楽しんだり、沈床花壇に咲き乱れるバラに顔を寄せたりしている。空は晴れていたが、すでに秋の気配は色濃く、肌寒い陽気だった。 
 老婦人は厚手のショールをまとい、氷川丸の前にあるいちばん端のベンチに一人腰かけていた。松永が指定した場所だ。指示した通り、連れの姿はない。松永はベンチに歩み寄ると、その隣に腰を下ろした。
「これを」
 松永が分厚い封筒を差し出す。中身は、アトスとアラミスが木庭敦子の金庫から持ち去ったもので、裏帳簿のほかに小さな書簡入れもあった。
「松永さん、心からお礼を申し上げます。あなたは、本当によくやってくださったわ」
「いいえ、わたし一人の力ではない。うちのメンバー全員の仕事です」
「そうね。本当にありがとう」
 塚越涼子はそう言うと、小切手の入った封筒をバッグから取り出すと、松永の膝にそっと置いた。
「トーホー開発の専務に復帰されたことを新聞で拝見しました。『おめでとうございます』と言うべきでしょうか」
 松永がそう言うと、老婦人は力なく笑った。
「今さら、こんな年寄りの出る幕でもないでしょうけど、夫が立ち上げたあの会社を何とか元の姿に戻したいと思って。あなたたちのお陰で、シロアリたちの駆除は済んだけど、社員たちの動揺も小さくないようだし……」
 涼子の言葉に、松永は無言で頷いた。
「だけど、これで亡くなったあの子の恨み、桜井美里の恨みが晴らせたわ。親友の無念も、これで……」
「そうでしょうか」
 松永が言った。
「えっ?」
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