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私、普通の恋愛は無理なんです
第4章 他人のもの
 右斜め前のデスクの香織はもう自分の席にいた。超ナチュラルメイクの彼女の頬はほんのりと赤みがかったピンク色で、ぱっちりとした瞳は少し潤んでいるように見えた。
「おはよう。香織」
 香水を振っているのか、珍しく香織の方から少し甘い香りがしている。いい香りだ。
「あ、みきちゃん、おはよう……」
 完全に恋する乙女の瞳だった。さすがに「昨夜は部長としましたか」とは女の子同士でも聞き辛い。私は「…………でさあ……」と話題を切り出した。香織が、はい、と言いませんようにと、ココロの中で唱える。
「あっ……うん……」
「……か……」部長の家に行って片付けたのは、たぶん香織だ。
「だけど……」と、香織が続ける。……だけど?
「……ああ、いい、いいよ。香織。親友でも言えないこともあると思うし……」と言うと、私は自分の席を立った。
 ああ、ちゃんと伝えておくんだった。割り切ったセフレなんて辛すぎるよ。私の悪いところだ。いつも他人のものが欲しくなってしまう。こうなってから気づいても遅過ぎる。
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