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独占欲に捕らわれて
第6章 契約期間開始
「そうだ、チサちゃんに聞きたいことあったんだよね」
紅玲はメモ帳を広げながら言う。
「なにかしら?」
「チサちゃんってOLさんでしょ? 大雑把でいいから、1日の流れとか教えて貰っていい?」
質問を投げかける紅玲の目は、真剣そのものだ。

「いいけど、そんなの知ってどうするのよ?」
「合コンの時にも言ったけど、オレはシナリオライターもやってるからね。今度OLさんが主人公の話書くことになったんだよねぇ」
「あぁ、そういうことね。8時半に出勤して、10時まで仕事。15分の休憩してから、12時まで仕事。30分のお昼休憩があって、それから3時まで仕事。また15分の休憩して、5時まで仕事よ」
千聖が大まかなスケジュールを話すと、紅玲は黙々とメモをする。

「なるほどね……。休み時間って、どう過ごしてるの?」
「15分休憩は大抵後輩とおしゃべりかしら。カップ自販機があってね、そこでカフェラテとか買って恋バナを聞いてるわ」
紅玲は筆を止めると、顔を上げた。
「恋バナ? チサちゃんが?」

鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする紅玲に千聖は吹き出し、天ぷらをひと口かじって頷く。
「そうよ。といっても、後輩のを聞いてるだけなんだけどね」
「そっか、安心したよ」
紅玲は小さく笑うと、メモ帳に目線を戻す。

「それってどういう意味?」
「だって、チサちゃんと恋バナって結びつかないよ。死ぬほど人を愛したことがある?」
千聖が不満げに言うと、紅玲は澄んだ目で彼女を見つめる。
(なんて顔してんのよ……)
「あるわけないでしょ」
「知ってる」
当然と言わんばかりに言われ、千聖は少しむっとする。

「そういうあなたは、死ぬほど人を愛したことがあるの?」
「愚問だね。俺はチサちゃんを死ぬほど愛しているよ」
即答されて千聖は言葉を詰まらせ、うどんをすする。

「ねぇ、そばが伸びちゃう」
「ん? あぁ、そうだね。取材はデザートの後にしよう」
紅玲はようやくそばを食べ始めた。
「是非ともそうしてちょうだい」
つっけんどんに言いながらも、千聖は会社の日常を思い出しながら食事をした。
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