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官能小説家のリアル
第8章 変化
中はクッキーやチョコレートなど、洒落た物。持って来たお茶を呑みながら食べていると、美波の前に本を持った若い女性が次々と訪れる。
「みなみ先生。応援してます。これからも、頑張ってください」
「ありがとうございます」
そんな様子を見ていると、直哉はまた、美波が凄いと感じた。
美波が頑張ると、喜ぶ人がいる。美波には、人を喜ばせる力がある。
また一つ美波の“いいとこ”を見つけ、直哉は嬉しくなった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
二人は美波のマンションへ帰ってくると、無言でソファーに座っていた。
何かあったわけではない。ただ疲れているだけ。特に直哉が。
今回も打ち上げはあったが、“腐女子の会”に直哉を連れて行くわけにはいかない。そう考え、美波は直哉と帰って来た。
「ビール呑む?」
「うん……」
力ない直哉の返事を聞き、美波は笑いながら冷蔵庫のビールを差し出す。
「はい」
「サンキュー……」
タブを開けて一口呑むと、直哉が美波を見た。
「疲れたけど、美波って凄いなあって思った」
「私だって、やる時はやるでしょう?」
美波が笑うと、直哉が首を振る。
「それもそうだけど。美波の本を買うのに凄い並んだり、嬉しそうに挨拶してったり。やっぱ先生だよなあ」
「そんなことないよ。私は、たまたま運が良かっただけ。デビュー出来たこと自体が」
しみじみと言うのを聞き、直哉はまた首を振った。
「頑張ってるじゃん、美波。オレが、一番近くで見てるから」
そう言われると、美波も嬉しくなる。
「ありがとう」
「そんな可愛い顔されると、ヤりたくなるけど……。今日はムリ……」
ソファーに深く体を沈める直哉を見て、美波は笑い出した。