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官能小説家のリアル
第2章 悩み

「お疲れ様ー!」
桃恵の言葉で、それぞれにグラスを合わせる。
イベントの後の打ち上げ。
“腐女子”としての話が盛り上がるため、場所はカラオケボックスのパーティールーム。
毎回のことで、ここも桃恵が予約しておいた。
一杯目だけはみんなに合わせて、美波もビールで乾杯する。でも呑み切らずにすぐジュースに変えると、残りは桃恵が呑んでいた。
「美波、疲れた? 元気ないじゃん」
「まあね。暑かったし」
桃恵に訊かれ、美波が曖昧に答える。
それを聞いたみんなは、暑さについて話し始めた。
そんな中、美波は飯田の雑誌のことを考えている。
仕事の幅を広げるのはいいこと。雑誌が減っていく中、書ける雑誌は多い方が生き残りやすい。ネット小説もあるが雑誌より単価が安く、数を熟し読まれて印税が入らないとやって行かれなくなってしまう。
でも、男女のセックス描写のある小説。
そんな小説を卑下(ひげ)しているわけではない。自分が書いている物にも、過激なセックスシーンが出てくる。
問題は、男女だということ。
今でも直哉とのセックス中にBL小説のネタを考えてしまう。それが男女となれば、自分がしていることがネタに、と思うと、美波はその場で断れば良かったと後悔した。
「……そこでいきなりバックから。 いいと思わない?」
「それもいいけどさぁ。最後は正常位がいいよねぇ」
桃恵と梨央が、何やら腐女子話をしている。
「美波ちゃんは、そういうの書かないの?」
二人の話を聞いていた由香里が、美波に訊いてくる。
「ん。ネタにさせてもらおうかなぁ」
笑っては見せたが、美波は二人の話を聞いていなかった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
打ち上げを終えてマンションへ帰ると、エントランスの植え込みのレンガに座っていた直哉が立ち上がる。
彼は一週間の盆休み中。Tシャツにジーンズというラフな格好だった。
「美波。何してたの? こんな時間まで」
こんな時間といっても、まだ21時。

