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官能小説家のリアル
第4章 戸惑い
十月に入り、美波はファミレスでの飯野との打ち合わせ中。
「ここなんですが。ここは台詞だけでなく、心情を書いた方が分かりやすいかと」
飯野が紙原稿を指差す。
「読者は男性なので、女性の考えは伝わりづらいと思います。勿論それは、僕の提案ですが」
BLでは、台詞だけで充分。読むのが女性のため、台詞だけにした方が色々な解釈でも共感してもらいやすい。美波はそう思って書いた。
やはり、勝手が違う。
美波は、怖いとも感じていた。
色々とした“努力”が評価される場合もある。でも、小説は結果のみ。いくら頑張ったと言っても、掲載された内容のみで評価される。
そんな怖さを感じていたのは、デビューして数年だけかもしれない。
書けば受ける。今の美波には、そんな奢りもあった。それは簡単に打ち砕かれる物。
勿論今までも、100%の支持は無い。そんなことはあり得ないから。でも80パーセントの読者から、“まあまあ面白い”以上の評価を受けていた。中には、熱烈なファンも多い。
そんな中での新しいジャンル。美波は、PNを変えればよかったと今更後悔した。
女性と男性では感性が違う。美波も分かっていたつもりなのに。
初稿の紙原稿を持っての打ち合わせなど、今まで無かった。デビューの時でも、校閲の前に担当と電話だけ。
飯野がわざわざ打ち合わせの時間を割いてくれたのは、美波のため。
BL小説で名が売れている作家が、ジャンルが違いでの初めての掲載。美波も気を遣われていると感じた。
「全てを見直していいですか? 男性目線を意識して、二稿を提出します」
「はい。みなみ先生なら、そう時間はかからないでしょうから。締め切りは、ここで」
飯野が日にちを指定する。
「分かりました。必ず」
「よろしくお願いします。……何か、ご質問などあれば。僕で良ければお答えしますが」
男性を興奮させられる小説。美波は、男性の意見も不可欠だと思った。
「あの……。どんな体位が、興奮しますか?」
躊躇はあったが、これは仕事の話だと思い、美波も開き直る。