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ひと夏の恋……そして……
第16章 すれ違う気持ち

「本当に、夏樹がすいませんでした」

私のためにやってくれたのだから私にも責任はあると思い、車を運転しながら改めて頭を下げた。

「いきなり殴られて驚きましたけどね。それでも真緒さんを思う気持ちが伝わってきましたよ。――でも、私が本当の和泉さんだったら夏樹さんはどうしたんでしょうね。前みたいに諦めるのか、それとも手離さないのか」

もし本当の和泉が現れたら……
少し前だったら何も言わずに応援してくれたかもしれない。
だけど今はお互いの気持ちは同じ方向を向いている。
私の気持ちを分かってくれている夏樹なら諦めることはないと言い切れる。

「真緒さんには酷な話でしたかね」

黙り込む私を佐伯さんは勘違いする。
私の気持ちは夏樹だけが理解してくれている。

「いえ。大丈夫ですよ。もし、和泉が現れたとしても諦めることはないと思います。それに――私が和泉を選びません。私が選ぶのは夏樹ですから」

私は佐伯さんに断言する。
私が今選ぶのは、和泉ではなく夏樹なのだと。


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